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カムカムプロジェクトの実践報告

5.実践内容(4)

この町は、コロンビアとの国境を流れているプテゥマヨ川沿いにあります。イキトスから小型飛行機で約50分、船だと途中でブラジル、コロンビアの領土を通らなければ行けず、かなり大回りで約2週間かかってしまいます。どうしてこんな遠いところにある町を選んだかと言いますと、調査の結果、この周辺一帯に最も多くカムカムが自生していたからです。
最初に農業省から入手した分布図には載っていませんでしたが、わざわざこんな遠い所まで来て、農業省が時間と費用をかけてまで調査する必要がないと思ったかもしれません。私が入るまでには、ほとんど誰も手をつけず、子供達がカムカムの木を揺すって 川に中に落として遊んでいただけだったそうです。その後は、農業省も我々の情報を元に分布図を修正していき、今では知られるようになりました。

コカとカムカムの苗

どうしてこんな所に町ができたのか疑問でした。 何も産業らしいものはなく、対岸のコロンビア側には町もなく孤立しており、商業の町としても不自然です。
実は、この町は、ペルーからコロンビアへ麻薬のコカインを運ぶルートの拠点だったのです。麻薬のルートだけではなく、この周辺でコカインの製造もしていました。それを取り締まる、対麻薬の警察部隊が駐屯していました。


コカ畑

この町にはまだほかにも問題がありました。 コロンビア川には、ゲリラ活動をしているコロンビア革命軍のFARCが潜んでいて、ペルー側に侵入してくる可能性があるという情報が流れていました。そして、ペルーに侵入してくるのを防ぐために、ペルーの軍隊まで出動して、駐屯地が出来ていました。ペルーのテロ組織MRTAも、社会主義的政治活動から武装闘争に変わる時期に、コロンビアのゲリラから戦闘を習うため、このあたりを出入りしていたと、元MRTAの幹部が教えてくれました。

麻薬のマフィア、コロンビアのゲリラ、ペルーのテロ組織、軍隊、警察と問題だらけの町になってしまいましたが、せっかく天然物が最も多く自生している場所を見つけたのでプロジェクトをやり通したいと思いました。そして、いっそうのこと、すべての組織と、ある程度の距離を置き、適当に良い関係を保ちながら付き合っていくことにしました。麻薬のマフィアには、コカの代替作物の話には一切触れず、現地の人たちの意志で、カムカムを採集し、より収入を得ようとしているだけで、麻薬とは関係ないという振りをすることにしました。しかし、現地の人達は本当にカムカムで生計が立てられるのなら、もうコカを栽培したり、麻薬に関係する仕事からは手を引くと言ってくれました。




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